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平出 哲也; 鈴木 直毅*; 斎藤 文修*; 兵頭 俊夫*
no journal, ,
低温域(-50C以下)では多くの物質中で分子運動が凍結され、電離の際に放出された電子は0.53eV程度で束縛され長時間安定に存在できる。このような物質中に入射された陽電子は通常のスパー(放射線がエネルギーを付与することで形成される活性種が集まった領域)内過程によってポジトロニウム形成するが、この過程を逃れた陽電子は、その後拡散する過程で弱く束縛された電子を捕まえることによりさらにポジトロニウム形成が可能となる。この過程は通常のポジトロニウム形成に比べ比較的遅く起こることを実験により示してきた。今回、これら実験データを物質中における陽電子の局在化も考慮し、解析を試みた。その結果、ポリエチレン中、20Kにおいて陽電子は数十ピコ秒程度で局在し、拡散できなくなることがわかった。
橋 洋平; 平出 哲也; 鈴木 健訓*
no journal, ,
-同時計数による陽電子消滅寿命測定を、デジタルオシロスコープを用いて行った。線源から放射された陽電子が通過した情報を得るためにフォトダイオードを使用し、試料内からの反対方向へ放出される2本の消滅線を検出するために、シンチレータをマウントした光電子増倍管を2つ使用する。この測定は、デジタルオシロを用いた初めての-での寿命測定であり、従来のアナログ回路での-同時計数による寿命測定に比べノイズに対する信号強度が改善された。
小室 葉; 平出 哲也; 鈴木 良一*; 大平 俊行*; 村松 誠*; 鈴木 健訓*
no journal, ,
陽電子が凝集相中に入射されると、熱化する直前に小さな領域(スパーあるいはブロッブと呼ばれる)に多くのエネルギーを付与し、数十個のイオンと過剰電子が形成される。ここで陽電子は過剰電子のひとつとポジトロニウム(Ps)を形成する。スパー(ブロッブ)内のでPs形成のモデルによると、Ps形成は過剰電子と陽電子が近接して熱化した場合とそうでない場合で形成までに要する時間が異なり、遅れて起こるPs形成が存在する可能性がある。これは陽電子消滅寿命-消滅線エネルギー相関測定(AMOC)によって消滅時間分解した半導体検出器で測定した消滅線のピークの形状変化から、各消滅時刻においてどのような状態から消滅しているかを検出することが可能であり、このAMOCにより、10年以上前からPsの緩和現象とドイツのグループが解釈してきた実験結果が、この遅延形成によるものであると考えられる。試料に電場をかけることで、ドイツのグループの解釈どおりPsの緩和であるとすれば、電場下でも同様の結果が期待されるが、Psの遅延形成であるとすると、近傍で熱化した陽電子・電子ペアは電場の影響をあまり受けずに速くPs形成し、拡散が必要な遅延形成がより電場の効果を受け、その結果、電場下では遅延形成の効果が見えなくなると予測された。われわれは試料(溶融石英)に電場をかけながら実験を行うことで、緩和現象ではなく、陽電子の拡散後に起こる遅延Ps形成であることを確認した。
前川 雅樹; 河裾 厚男
no journal, ,
炭化ケイ素基板への酸素イオンビーム照射により埋め込み酸化膜層の形成と、陽電子消滅法による評価を試みた。照射直後においては、酸素注入領域においてSパラメータが上昇し、多数の空孔型欠陥が存在することが明らかとなった。酸素イオン打ち込み領域のS, Wパラメータは、アモルファスSiOのそれとは異なっており、酸化膜の形成は不十分であると思われるが、照射後の熱アニールによって、酸素打ち込み領域である7keV付近のSパラメータに盛り上がりが生じた。これは、アニールによって打ち込まれた酸素とSiCが反応し、埋め込みSiO層が形成したものと考えられる。しかし同時にWパラメータが増大したため、酸素原子はSiと完全には反応せず、多数の酸素ダングリングボンドを伴った未反応酸化物を多く内包していることが示唆された。
Yu, R.; 河裾 厚男; 前川 雅樹
no journal, ,
本研究において、われわれは、陽電子ビームを直径数十マイクロメーターに収束させることを試みた。ビームの収束化は、投影レンズ,中間レンズ,対物レンズを備えた市販の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行った。比較的高いエネルギーの陽電子ビームと十分に小さな線源を使うことにより、マイクロビームの形成が可能である。200マイクロメーターの金属グリッドを用いてビーム径を見積もった結果、現段階では、その大きさは70マイクロメーターであることがわかった。実験では、一次元と二次元走査の両方を、テストサンプルにて行った。ステンレスメッシュ上に形成した130マイクロメーター大きさを持つ穴の中心のラインスキャンから、横方向の分解能は30マイクロメーターであることがわかった。
谷地 洋也; 橋 洋平; 平出 哲也; 鈴木 健訓*
no journal, ,
従来のアナログ回路(NIMモジュール)に変えて、陽電子寿命測定にデジタルオッシロスコープが使用されるようになってきた。この方法により、シンチレーターと光電子増倍管を組合せた線検出部からの信号波形を、直接デジタルオシロスコープに入力し、100万イベント以上の波形データを記録した後、すべてのイベントの解析を行うことができる。例えば、Na-22を用いた陽電子寿命測定の場合、従来は数時間かけてアナログ回路で解析した陽電子消滅時刻情報をマルチチャンネルアナライザー(MCA)に100万イベント程度記録していたのに対し、デジタルオシッロスコープでは安定性が高いため優に100倍の時間をかけて多数のデータを記録することが可能となった。ただし、現状では安定性評価や測定についての指針等は未だ作られていない。そこで、安定性等について実験的な検討を試みた。その結果、複数使用している光電子増倍管には、電源を共通させることにより陽電子消滅時刻情報のドリフトを抑えられること、また、取り込み時のアナログ系のゲインを調整し、できるだけ入力波形の分解能が高くなるよう条件を設定することで時間分解能が向上すること等の結果を得た。
前川 雅樹; 河裾 厚男
no journal, ,
陽電子マイクロビームを用いることで、空孔型欠陥の3次元的空間分布の取得や微小領域の欠陥構造の評価が可能となる。現在、われわれは陽電子ビームを10m以下に収束し、試料の2次元顕微走査を行うビーム装置の開発を進めている。これまでに、線源の製作,ビーム発生部の設計,ビーム輸送部の設計,収束レンズの選定,測定チャンバーの設計,寿命計測用パルス化装置の設計,高周波系統の設計,磁場輸送からの引き出し部の設計と試験,消滅線計測システム構築などを行ってきた。なかでも、ビームの収束に重要である小型密閉線源の製作においては、55.5MBqのNa-22水溶液を市販線源の半分のサイズへと乾固させ、さらに線源ウインドウ(厚さ5mチタン箔)を用いた密閉に成功した。テストビームラインでのビーム発生試験ではビーム径は12mm程度となった。これは線源ウインドウのサイズを反映しているものと思われる。ビーム強度は3000個/s程度であり、試験に用いたモデレータ(タングステン箔)の変換効率から予想されるビーム強度とほぼ一致した。以上より作成した線源はマイクロビーム形成に十分な性能を持つものと思われる。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
電子ビームを用いた固体表面における非弾性散乱過程(おもに表面プラズモン励起)は、理論・実験の両面から詳しく調べられている。これまでに、入射角が小さくなるにつれて、表面プラズモンの励起回数が増えていくなどの知見が得られている。一方、陽電子ビームは表面にすれすれの角度で入射させると全反射を起こしうるため、電子ビームの場合とは表面プラズモンの励起過程が異なってくると予想される。そこで本研究では、全反射条件における表面プラズモン励起過程を調べるために、エネルギー分析型の反射高速陽電子回折の開発を行った。今回作製したエネルギーフィルターは、阻止電位グリッドを入射側のグランドグリッドとマイクロチャンネルプレートで挟んだ構成になっている。使用するメッシュの粗さは、エネルギーフィルターの分解能とビーム形状に顕著に反映することがわかっている。さまざまな構成を試した結果、入射側のグランドグリッドとして金100メッシュ、障壁グリッドとしてステンレス250メッシュを用いている。講演では、このエネルギーフィルターを用いて、Si(111)-77表面からの鏡面反射スポットのエネルギー分析スペクトルの測定結果について報告する。
河裾 厚男
no journal, ,
ベータ崩壊によって生ずる電子や陽電子は、パリティ非保存によって進行方向にスピン偏極している。金属多層膜の界面におけるスピン状態や金属超薄膜の表面の磁化状態は、基礎・応用の両面において今後も重要な課題になると考えられる。構造,電子状態,電子スピンの研究手法としてスピン偏極陽電子ビームの役割が期待される。われわれはこれまで開発した静電型陽電子ビームを磁性体の研究に適用するため、スピン回転器の製作とスピン偏極率の測定を行った。電子のスピン偏極率測定には、モット散乱と呼ばれるスピン・軌道相互作用による散乱の非対称性を計測する。しかし、高角散乱(120C)を観測する必要があり、ここでは散乱断面積が小さいため、低強度の陽電子の場合は難しい。磁性体を利用する方法も提案されたが、偏極方向は決定できるが偏極率の絶対値はわからない。そこで、ポジトロニウム運動量分布の磁場依存性から、スピン偏極率を決定することにした。この場合、ドップラー拡がり測定でも対応可能である。試料としては、ポジトロニウムの生成率がわかっている溶融石英を使用した。講演では、開発した装置の概要とスピン偏極率の結果について述べる。
堀 史説*; 福住 正文*; 河裾 厚男; 岩瀬 彰宏*
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Fe-Rh金属間化合物は化学量論組成では室温付近で反強磁性-強磁性の磁気相転移が存在する興味深い物質である。本実験では高エネルギーイオン照射後の陽電子消滅ドップラー拡がり測定により欠陥量と磁性についての相関を調べた。試料は等比組成のFe50at.%Rhであり、室温にて200MeVの136Xeイオンを照射した。これらの試料を0-30keVの陽電子ビームを用いて欠陥の深さ分布を測定し、Xeイオンによる照射欠陥の照射量依存性についての評価を行った。空孔型欠陥に起因するSパラメータの平均値を求め照射量依存性を求めたところ、1E+12ions/cm程度の照射量以上でSパラメータは増加し1E+13ions/cm付近でほぼ飽和した。これより空孔密度が30-50at.ppmであることがわかった。一方、SRIM-2003シミュレーションから期待される空孔密度は1000at.ppmのオーダーである。すなわち実測値とシミュレーションには大きな差があり、これが磁性発現に大きく寄与していることが示唆される。すなわち、単純な原子空孔の導入だけでは磁性変化を起こさず、今回の場合特に導入された空孔型欠陥の移動に伴う反構造欠陥(anti-site defect)が磁性発現に寄与しているものと推測される。
橋本 美絵; 深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
Si(111)-41-In表面超構造は擬1次元物質として知られており、120K以下で82構造へ金属-絶縁体転移を起こす。しかし低温相である82構造の原子配置については、未だ解明されていない。本研究では、最表面に敏感な反射高速陽電子回折(RHEPD)を用いて、相転移前後のIn/Si(111)表面からのロッキング曲線を測定し、動力学的回折理論に基づく強度計算との比較から、擬1次元In鎖の原子変位について報告する。RHEPDロッキング曲線の結果から、41構造はX線回折で決定されたジグザグチェーン構造であることを確認した。また82構造からのロッキング曲線の測定を行ったところ、相転移に伴ってロッキング曲線の形状が変化することを見いだした。理論的に提案されている2つの82構造モデルを参考に、ロッキング曲線のフィッティングを行い、最終的にヘキサゴン構造に近いモデルを得た。さらに、RHEPD解析から決定した原子位置を用いて走査トンネル顕微鏡(STM)像を第一原理的に計算したところ、STM像の観察結果を再現できることもわかった。以上の結果から、120Kで見られる金属-絶縁体転移は、In原子がジグザグ構造からヘキサゴン構造への原子変位に起因していることを明らかにした。
Zgardzinska, B.*; 平出 哲也; Goworek, T.*
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低温ヘプタデカン中では電離放射線によって捕捉電子が形成する。陽電子消滅寿命測定で用いる入射陽電子も電離放射線であり、その結果捕捉電子が形成され、捕捉電子と陽電子によるポジトロニウム形成が起こる。すでに捕捉電子の密度が、ポジトロニウム形成収率と相関があることは明らかにされている。過去にポリエチレン中とポリメチルメタクリレート中では、同様のポジトロニウム形成であっても、必要な捕捉電子密度には大きな違いがあり、これは陽電子の拡散距離の影響と考えられてきた。低温ヘプタデカン中で、捕捉電子密度が変化しない温度域で、温度を変化させ、陽電子の拡散距離のみを変化させ、その際のポジトロニウム形成の変化を実験で検出することを試みた。その結果、捕捉電子密度の変化はないにもかかわらず、ポジトロニウム形成収率に変化が見られ、捕捉電子と陽電子によるポジトロニウム形成に、陽電子の拡散距離が影響していることが明らかとなった。
小林 慶規*; 伊藤 賢志*; 岡 壽崇*; 榊 浩司*; 白井 泰治*; 誉田 義英*; 島津 彰*; 藤浪 真紀*; 平出 哲也; 斉藤 晴雄*; et al.
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陽電子消滅寿命測定法の標準試料作成のために、石英ガラスとポリカーボネート試料を産総研を中心に、大阪大学,千葉大学,東京大学,筑波大学,東北大学,東京学芸大学,日本原子力研究開発機構,日東電工,東レリサーチセンターが参加し、12か所で陽電子消滅寿命測定した。その結果、測定方法をある程度統一にすることで、装置の違いや実験者の違いによる差は小さくすることが可能であることを明らかにした。
河裾 厚男; Chen, Z. Q.*; 前川 雅樹
no journal, ,
水熱合成法で育成されたZnO(0001)単結晶に対して、室温で3MeV電子線照射を行い、照射後に生成している一次欠陥と照射後熱処理で生じる二次欠陥を同時計数ドップラー拡がり測定から得られる電子運動量分布より同定した。また、これを行ううえで全電子法(Projector Augmented Wave(PAW)法)に基づく理論計算を行い、電子-陽電子運動量分布,陽電子寿命,結合エネルギーなどを得た。その結果、照射直後の電子運動量分布は亜鉛空孔を仮定することで再現できることがわかった。酸素空孔も一次欠陥として生成していることが、別の測定からわかっているが、酸素空孔における陽電子波動関数の局在性は非常に弱く、バルクに極めて近い電子運動量分布となることがわかった。照射後400Cの熱処理では、電子運動量分布はよりブロードになり、亜鉛空孔では説明できない。酸素空孔が変態することで生成する亜鉛空孔と亜鉛アンチサイトの複合体を考えることで、電子運動量分布がよく再現できることが明らかになった。
前川 雅樹; 河裾 厚男
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原子力炉材料の劣化評価と破壊メカニズムの解明において、結晶粒界での欠陥構造の解明に有用であると思われる、陽電子マイクロビーム装置を開発した。独自開発の小型陽電子線源と高効率固体ネオンモデレーターを使用し、高倍率の対物レンズを組合せることで最小ビーム径1.9mの陽電子マイクロビームの形成に成功した。性能評価のために、テストパターンの走査を行った。線幅12mのテストパターンの形状が陽電子消滅パラメータの変化として明瞭に観測されていることがわかった。これより、金属材料の亀裂先端部位など、微小領域の空孔型欠陥の分布測定に十分な性能を有していることが明らかとなった。
深谷 有喜; 橋本 美絵; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
no journal, ,
荷電粒子は、結晶に入射すると、電子励起やフォノン励起などの非弾性散乱を起こす。電子ビームによる結晶表面での非弾性散乱過程は、実験・理論の両面から詳しく調べられているが、陽電子による研究はほとんど行われていない。本研究では、高速陽電子ビームの固体表面における非弾性散乱過程を調べるために、エネルギー分析型の反射高速陽電子回折(RHEPD)装置の開発を行った。今回開発したエネルギー分析器は、円筒レンズと阻止電位グリッドから構成されている。試料から回折したビームは、円筒レンズによって平行化され、平板状の阻止電位グリッドに対して垂直に入射する。SIMIONを用いたビーム軌道シミュレーションにより、回折ビームが広い散乱角にわたって平行化することを確認した。7kVに加速した入射陽電子ビームのエネルギー分析スペクトルを測定したところ、このシステムの分解能が4.6eVであることがわかった。またこのシステムでは、電圧の極性を逆転させることにより、陽電子回折と同じ実験条件で電子回折の実験を行うことが可能である。同様にして、入射電子ビームのエネルギー分析を行ったところ、陽電子ビームの場合と同程度の分解能が得られた。また、陽電子線源を用いて形成した電子ビームにおいても、明瞭な回折パターンを得ることに成功した。講演では、Si(111)-77表面からの全反射条件下における鏡面反射強度のエネルギー分析スペクトルの測定結果も報告する。
平出 哲也; Lee, J.*; 中村 剛実
no journal, ,
入射陽電子のターミナルスパーで、電子と陽電子の結合状態であるポジトロニウムは形成され、100ピコ秒から数ナノ秒程度の寿命で消滅する。三重項であるオルソーポジトロニウムは最長寿命成分であり、ポジトロニウムが捕まるサブナノ空孔の大きさに依存した寿命で消滅する。空孔サイズが大きいと寿命が長くなり、液相中ではバブルに捕まるため、高温ではバブルが大きくなり、寿命は長くなる。しかし、水中での温度依存性は逆の傾向を示し、原因は理解されてこなかった。オルソーポジトロニウムがスパー内活性種であるラジカルなどとスピン交換反応などをし、消滅していくと考えると、この特殊な温度依存性は説明できる。われわれは、時間分解陽電子消滅線エネルギー測定から、初めてオルソーポジトロニウムとスパー内ラジカルとのスピン交換反応を検出した。
河裾 厚男; 前川 雅樹
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熱平衡原子空孔は結晶の自己拡散や不純物拡散の担体として極めて重要であるが、シリコン中の熱平衡原子空孔については不明な点が多く残されている。WuruschumやThrowe等が行った陽電子ビーム実験では、熱平衡原子空孔は全く検出されなかった。われわれは、熱平衡原子空孔を確認するためには、融点(1414C)直下まで測定温度域を広げること,添加種や濃度を系統的に変化させること、そして、試料の加熱中心を集中的に観測すること、が重要であると考えている。そこで、加熱中心を選択的に観測できる陽電子マイクロビームを用いて、各種のシリコンに対して陽電子消滅ドップラー拡がりの高温その場測定を行った。その結果、陽電子消滅Sパラメータは1400C近傍まで一定であるが、融解に至る過程において一旦減少し、再度上昇することが明らかになった。高濃度にアンチモンを添加した試料では、融解直前のSパラメータの増加は最大で6%となった。Sパラメータの減少は、恐らく、融解前駆状態としてダイヤモンド構造とは異なる相が形成されたためと考えられる。Sパラメータの増加は、原子空孔の生成に起因すると考えられる。このように熱平衡原子空孔は融点直下でのみ起こり、添加種によっても異なる。
深谷 有喜; 河裾 厚男; 一宮 彪彦
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結晶表面における電子状態や格子振動は、電子ビームを用いたエネルギー損失分光法を用いて詳細に調べられている。一方、陽電子ビームを用いたエネルギー損失分光の研究はほとんど報告されていない。陽電子は結晶表面に対して低い視射角で入射すると、表面第一層で全反射を起こすため、陽電子のエネルギー損失過程は、全反射条件下で特異な振る舞いをすると予想される。そこで本研究では、エネルギー分析型反射高速陽電子回折を用い、Si(111)-77表面からの陽電子エネルギー損失スペクトルを測定した。測定した全反射陽電子のエネルギー損失スペクトルにおいて、小さなゼロロスピークとシリコンの表面プラズモン励起に対応する損失ピークを観測することができた。解析の結果、陽電子による表面プラズモンの平均励起回数は約2.6回であることがわかった。平均励起回数2.6回を考慮することにより、回折スポットの広がりと絶対反射率の測定結果も説明できることがわかった。同様にして、電子によるエネルギー損失スペクトルを測定し、解析した結果、電子による平均励起回数は約1.4回であることがわかった。以上の結果から、電子の場合と比べると、陽電子は結晶表面で表面プラズモンを多数励起していることがわかった。
前川 雅樹; 河裾 厚男
no journal, ,
われわれのグループでは、これまでに陽電子マイクロビーム装置の開発を行ってきた。現在の装置ではドップラー幅広がり測定が可能である。空孔に関するさらに多くの情報を収集するためには、陽電子寿命計測を行う必要がある。そこで既存のビームラインに挿入して使用するユニット型の陽電子ビームパルス化装置を開発した。これは同軸円筒型プリバンチャー,偏向型チョッパー,空洞共振器型バンチャーから構成されている。実際にパルス化装置を動作させたところ、140psのパルス幅を持つビームが形成できること、寿命測定が可能であることが確認された。